黒の三日月
使われてしまったら私は嫌でもあの日の事をまた思い出してしまいそうな気がする。

ギッと睨み続けたらヒイラギも諦めたのか小さく溜息を吐いて“仕方ないな”と呟き、

靴を履き終え立ち上がるとすぐに私の傘の中に入ってくれた。

1人用の傘に2人。恋人同士や同性の友達同士でやるのとはまた違う、相合傘。

誰にも見られていないと言うのが唯一の救い。もし見られでもしていたら変な噂になりかねない。


「あ……」


ぼんやりとしていると、持っていた傘をヒイラギに取られてしまった。

まさか独り占めでもする気なんじゃないかと思ったけれど、

その次の言葉でその考えも何処かへと消えて行った。


「お前の背丈に合わせたら腰悪くする。俺が持ってやる」


死神でも腰を悪くする事を気にするんだね。なんだか少しおかしいや。
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