黒の三日月
「どうした。来ないのか? 怖気づいたんじゃないだろうな?」


怖気づいた訳ではない。でも何故か分からない。剣を持つ手が震えるのだ。

武者震いと言うにはまた違う感覚。私はどうしたいの?

今目の前にいるヒイラギを倒したいんじゃないの?


「うわぁぁぁぁぁぁ」


頭の中で整理がつかないまま、ただ私はヒイラギ目掛けて突進してそして……。


「俺はまだ死んではいないぞ?」

「…………っ」


ヒイラギの身体に剣が触れる訳でもなく。私の顔はヒイラギの耳元にあった。

思わず持っていた剣を落とし、私はそのままその場にくず折れた。

その様子にヒイラギは眉1つ動かさずに同じようにしゃがみ込み、私の顔を覗き込んだ。
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