黒の三日月
その場から姿を消せるのはヒイラギ以外に思い付かなくて。

これだけではなく、他の色々な事からも今まで私を助けている。

此処まで来れば大抵の人は“超が沢山付くくらいの命の恩人”と感謝してもしきれない気持ちになると思う。

でも私にはそんな気持ちは一切なかった。相手は今この世界で最も憎い人なのだから。


「感謝なんてしていないから」


両手で頬杖をついてポツリと呟いた。

すると前の席の方からこの暗い気分を吹き飛ばすかのような明るいトーンの声が聞こえてきた。

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