黒の三日月
「おはよう! ……? どうしたの? そんなに暗い顔なんかしちゃって」


優衣だ。2学期に入ってすぐにやった席替えで、幸運にも優衣は私の前の席になったのだ。

……言っても信じて貰えないとは思う。

だってこの長い間に何度も何度も危険な目に遭っているなんて現実では有得ない話だから。

でもだからといって話をはぐらかしても、そのはぐらかしに乗ってくれないのが優衣だ。

正直に言ってしまおうか。


「ちょっと悪い事が続いているだけだよ」


悩んだ末、詳しい事は言わないでただこれだけを言った。

すると優衣は何を思ったのかスッと何かを差し出した。

手の中にすっぽりと収まったオレンジ色の可愛らしいクマのぬいぐるみのキーホルダーだ。
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