黒の三日月
その言葉は妙に心にしみて、ジーンとしてしまう。

優衣は本当に名前の漢字通り、優しい子だ。

これを皮切りに良い事がどんどん起きる……なんて都合の良い事なんて起きないか。


「優衣、大好き!」


感動のあまり思わず抱きつきたくなったけれど、机と言う障害物があって出来なかった。

だから精一杯に大きな声で言った。

周りは同じようにざわついているから、じろじろとこっちを見られる事もなかった。が。


「少しは静かにしろ」


その横をヒイラギが通り過ぎた。振り返り、ヒイラギの後姿をじっと睨んだ。

何であいつの席は私の後ろの後ろなんだろう。

前みたいに離れていてくれたら良かったのに。
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