黒の三日月
「……逃げろ」


漸く言葉を発したかと思えば私の言った言葉とは矛盾したそのヒイラギの言葉に、

私は更に怒りが増しそうになった。

その言葉にやや力がないようにも感じたけれど、そんなのどうでも良かった。


「ふざ……っ!」


怒鳴ろうとしたその瞬間にヒイラギはその場に崩れて、

持っていた鎌を杖代わりに付いた。息を切らすヒイラギは明らかに弱っている。

恐る恐る近寄って見てみても特に目立った怪我もなく。何が一体どうなって……?


「だから嫌だった。こうなるって分かっていたから」


気配もないのに背後からまた別の声が聞こえて、振り向いた。

そしてそこにいた人物に私は目を疑った。

ヒイラギが此処にいたのを見た時よりも、それはひどく衝撃的で。何故此処にいるの……?
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