黒の三日月
それ以外の言葉は出てこなかった。


「手加減したんだけど、相当重症だったらしくてさ。
紛らわしい気の失い方するよな。本当」


倉山が笑いながらに言う。

あの時は本当に深刻な状況だったけれど、今となっては本当に笑っても良い出来事になってしまった。


「……アキラ、それからサトルも」

「ああ、分かった。行くか」

「邪魔しちゃ悪いもんな」


何も言わないでいたヒイラギが漸く言葉を口にした。

その言葉を聞いた2人は”またな”と言ってその場を去って行った。

今この場所には私とヒイラギの2人だけ。空には優しい薄黄色の三日月が光り輝いていた。
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