黒の三日月
「まずはちょっと放してもらおうか」


そういえば私、抱きついたままだった。だからすぐにヒイラギから放れた。

顔を真っ赤に染めてしまっているに違いない。無意識のうちにしてしまった事とは言え。


「体力が回復するのに時間がかかった。これはアキラの所為にしても構わない。
だからこうして会うのも遅くなった。悪かった」


珍しくヒイラギが頭を下げて謝る。私だって謝りたいのに。


「謝るのは私だから。お兄ちゃんやヒイラギの気持ち無視して暴走しちゃったから」


ヒイラギはたった一言“気にしていない”と優しく微笑んで言っていた。

ヒイラギってこんな風に笑う事あるんだな。


「ずっとヒイラギは私の所為で死んだって責めた事もあった。
これでも結構立ち直れなかったんだよ? ちゃんと言いたい事だって言えなかったのに」

「……言いたい事?」

「ヒイラギ、私を守ってくれて有難う」
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