黒の三日月
そして私は信じられない物を目撃することとなる。

お兄ちゃんの姿が誰かに遮られてしまった。

それは上から下まで全てを黒に染めた、恐らく男の子。その手には同じように黒い鎌。

キラリと怪しく光るそれはためらう事もなく、お兄ちゃんに目掛けて振りかざされようとしている。


「やめて! お願いだから連れて行かないで!」


私が願った想いとは正反対の行為。何故それが起きているのか分からない。

でもそんな中でもたった1つだけ分かる事があった。

「紗千(さち)? いきなりどうしたって言うんだ」

お父さんの手を振り払ってお兄ちゃんの元へ近付こうとしたのに、

お父さんは私のその腕をとっさに握る。何故そんな事をするの?

早くしないとお兄ちゃんは……。


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