黒の三日月
「もうすぐだから。お兄ちゃんの無念を晴らすのは」


写真の中のお兄ちゃんはあの時と変わらぬまま、ただ優しく笑っているだけ。

それ以外の感情は思い出の中。

お兄ちゃんはきっと今もまだ、辛いんだろうな。生きられなかった事を。

だから周りの人達は私に“お兄ちゃんの分まで強く生きるんだよ”と言う。

どう頑張っても私はお兄ちゃんの分まで生きる事が出来ない。

お兄ちゃんに恥じないような生き方が出来るとは思えないし、

自分勝手だけど私は私の分しか生きる事が出来ないから。


ごめんね、お兄ちゃん。
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