黒の三日月
私はお兄ちゃんのように器用じゃないから。

だからせめてお兄ちゃんを苦しめた原因だけは取り除かせて。

と、スカートをギュっと握りしめた時だった。背後に何かの気配を感じたのは。

すぐに振り向けば窓の向こうに誰かがいたらしい。

私は窓を開けて、ハイソックスを履いた足のまま外へと飛び出す。

正座の痛みなんて気にならなかった。

外へ飛び出し、30メートル程走ったその先で“それ”はまるで私を待っていましたと言わんばかりに、

立ちはだかっていた。全身を黒でまとった衣服、白い肌と黒い髪。

そして……金色の瞳。

4年ぶりの再会だというのに、私は懐かしいとは感じなかった。

……ああ、そうか。そうなんだ。1つの仮説を立ててみると、瞬間に完璧な確信が持てた。

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