黒の三日月
すると男の子は不思議そうにこう聞いてくる。


「誰とお話しているの?」

「誰って……今目の前にいるお兄ちゃんと……」

「誰もいないよー? 変なの」
 

男の子はそのまま去って行く。傍にいる彼の横を気付かずに通って。

驚く私とは正反対に夜見君、もといヒイラギは表情1つ変える事なく立っている。

そして1つの異変に気付く。


「影が……ない?」

「俺は人間でもなければこの世界に存在する者でもないから、影なんてある訳がないんだよ」


まるでそれが当たり前だと言わんばかりにヒイラギは淡々と話す。まさか……。


「死んでいるの?」

「その表現は間違っている。さっきも言っただろ? 俺は人間の終わりを見届ける存在だと」
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