黒の三日月
男の子は私の言葉がまるで聞こえていないようで、

その鎌はお兄ちゃんの身体を一瞬にして貫いた。音を立てる事もなく。

数秒後、私は思わず閉じてしまった目を開ける。血は流れていない。ただその代わりに……。


お兄ちゃんの死を知らせる心停止の高い音だけが虚しく響いた。

 
瞬間、私はその場にくず折れる。頭の中がグチャグチャしていて、

お父さんやお母さんが何をしているのかさえも分からなかった。

その時、一瞬だけあの男の子が私の方を振り向いた。

黒の髪に映える色白の肌。そしてこの世のものとは有り得ないくらいの金色の瞳。

それらを持った男の子は、窓も開いていないのにふわりと風が舞った瞬間に消えていった。
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