黒の三日月
「岩代、その目つき良いね。敵対しているって雰囲気が出てさ。
本番でもその調子で行けるんじゃない?」


ヒイラギを睨むように見ていたらしく、傍にいた倉山がポツリと私にそう言った。

それは喜ぶべきなのか怒るべきなのか。よく分からない。

よく分からないと言えばあのヒイラギの言葉。

この1ヶ月半、言葉を交わす事なんてないに等しかったから

“これから起こること全てに耐えろ”って意味が未だに理解出来ない。


「って、無視されちゃった? 俺」

「あ、ごめん。何だっけ?」

「……聞いていなかったのか」


本当は聞いていたけれど、聞いていないフリをする。何故かとっさにそうしてしまう。
< 55 / 203 >

この作品をシェア

pagetop