黒の三日月
「このページだ」


「あ、有難う……!?」


台本を見せながらどのページかを隣で教えてくれたのは、

出番を終えた筈のヒイラギだった。

私は思わず彼の傍からゴキブリの如く素早く離れ、彼を睨みつける。


「岩っちゃん……どうかした?」

「何でもない! 早くやろう!」


周りから見ればきっとムキになっているんだろうな、と思っているだろう。

もしくは間違った解釈をしている人は私がヒイラギを好きなんだ、と。

ないない。絶対にそんな事有り得る訳がない。そんな事よりも演技に集中しなきゃ、ね。

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