黒の三日月
もっと頑張ろうって気持ちになるから。


「とりあえず岩っちゃんは次のシーンまで今は下がって良いよ」


次のシーンはいつ頃にあるんだっけ?

元いた場所まで戻りながら台本を捲っていた時だった。


「あ、筆箱がない……ねえ、山江(やまえ)君。
そこにある筆箱こっちに投げてくれる?」

「この赤いのか? 分かった。ちゃんと受け取れよ?」


桜井さんと彼女より少し離れた距離にいた山江君のそんな会話が聞こえたかと思えば、

次の瞬間には……ガラスの割れる音と、ボンッという小さな爆発音。

振り向けば、さっきまで私がいた場所に粉々になった蛍光灯の破片と粉。
< 60 / 203 >

この作品をシェア

pagetop