黒の三日月
もし私があの場所にいたらと思うと寒気がする。

教室は一気に静寂に包まれ、すぐに破片の処理が始まった。

桜井さんと山江君が真っ先に近くにいた私に謝った。

筆箱を投げてと言わなければ、それで投げなければ下手したら私は大怪我をしていたから、と。

“これはただの事故なんだから気にしないで”と、私は2人にそう言った。


「本当に事故だったのか?」


騒ぎを聞きつけた大瀬先生が怪我人の有無を確認する声と同時に、

背後からはトーンの低い重々しい声の呟きが聞こえてくる。

振り向けば、ヒイラギが何事もなかったかのように台本を読んでいた。
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