黒の三日月
こっちに見向きもしようとはしないけど、今の声は明らかに彼の声。

これが故意に仕組まれたことのようにはどうしても見えなかった。


「岩代、大丈夫だったか? 怪我は?」

「大丈夫。ちょっとビックリしちゃったけどね」


そう。本来ならばこうして倉山のように心配をすれば良いものを。

でもヒイラギにそんなことを求めてなんかいないし、されたらされたでムカつくだけか。

この事故が原因で今日の練習は終わってしまった。やろうと思えば出来ない事もない。

でもこんな騒ぎの中で、練習どころではないという事、

そして場所を移そうにも空いている教室がなかったからだ。
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