ス キ ナ ヒ ト
゜・* 出逢い *・。
あたし、前薗あずみは短大を卒業して旅行会社へ就職した。3ヶ月間研修ばかりの毎日が過ぎて、やっと支店へ配属されて1ヶ月。新米だからまだ窓口はさせてもらえなくてほとんど電話番と雑用だけど、飛行機や新幹線の発券をさせてもらえることになった。

「あずみちゃん」
毎朝の日課の、店長や先輩達のコーヒーを入れる準備をしていると後ろから声をかけられた。
「高知さん!おはようございます」
振り向くとそこには主任の高知さんがいた。
高知仁志さん。奥さんも子供もいる32歳だけど、全然若く見える。あたしの大好きな人。それは、会社の先輩としてだけじゃなくて、1人の男性としても。誰にも言えない秘密の片想い。

「あずみちゃんのいれてくれるコーヒー、うまいよ」
「ただのインスタントですって」
毎朝必ず高知さんは給湯室へ寄って声をかけてくれる。こうして給湯室で高知さんとおしゃべりしながら過ごす少しの時間が嬉しかった。
「高知さん、ここにいたんだ」
給湯室の入口に見慣れない男の人が立っていた。180センチは越えるであろう長身で、黒っぽいスーツにあたし好みのネクタイをしていた。
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