【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
分かっているからこそ、どうしても冷たい言い方になってしまう。
誰にも知られたくなかった噂だからこそ、こんな先輩でも、目を見て話すことができない。
プレハブ小屋の扉に手をかけたまま、あたしは逃げることもできずにギュッと目を閉じた。
「そんなの分かってるよ。分かってるけど・・・・ていうか俺は、そんなちぃーちゃんだから一緒に部活をやりたいんだ」
そんなあたしの背中に、先輩の切なげな声がかかる。
「そんなあたしって・・・・。あたしが入った部活は廃部になっちゃうんですよ? それでもいいの?」
「ただの噂じゃん」
ただの噂?
先輩は本当のことを知らないからそんなことが言えるんだ。
赤の他人だから、そんな無責任なことをホイホイ言えるんだよ。
「その“ただの噂”のせいで、あたしはこれまでたくさん傷ついてきたんです!もうやめてよ!」
「でも・・・・」
せっかく隠していたのに。
だから遠くの高校を受験して片道2時間もかけて通っているのに。
ここでもまた・・・・。