【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
分かっているからこそ、どうしても冷たい言い方になってしまう。

誰にも知られたくなかった噂だからこそ、こんな先輩でも、目を見て話すことができない。

プレハブ小屋の扉に手をかけたまま、あたしは逃げることもできずにギュッと目を閉じた。


「そんなの分かってるよ。分かってるけど・・・・ていうか俺は、そんなちぃーちゃんだから一緒に部活をやりたいんだ」


そんなあたしの背中に、先輩の切なげな声がかかる。


「そんなあたしって・・・・。あたしが入った部活は廃部になっちゃうんですよ? それでもいいの?」

「ただの噂じゃん」


ただの噂?

先輩は本当のことを知らないからそんなことが言えるんだ。

赤の他人だから、そんな無責任なことをホイホイ言えるんだよ。


「その“ただの噂”のせいで、あたしはこれまでたくさん傷ついてきたんです!もうやめてよ!」

「でも・・・・」


せっかく隠していたのに。

だから遠くの高校を受験して片道2時間もかけて通っているのに。

ここでもまた・・・・。





 

< 16 / 73 >

この作品をシェア

pagetop