【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
“呪いの千景”
それが、中学の頃、陰で言われていたあたしのあだ名だった。
霊感があったわけでもないし、式神を操るとかいう陰陽師みたいなことができたわけでもない。
ましてや呪いなんて、そんな恐ろしいこと、あたしはできない。
「アイツさー、お高くとまって嫌じゃない? また部内で男子をモメさせて廃部に追いやったんだってよー」
「あたしは女子のほうもモメさせたって聞いたよー。ほら、3年のカスミ先輩、呪いの千景に彼氏とられたんだってー」
「うっそー!? マジ?」
「マジ。まただってぇ」
原因は、これ。
生まれたときからつき合ってきた顔だから、自分では特別なんとも思わないけれど。
周りの目というフィルターを通して見たとき、あたしは“美人”の部類に入っているらしいのだ。
それで、1年生の頃からそんな噂が絶えなかった。
そりゃ、部は廃部になりはしたけど・・・・なんでもかんでもあたしのせいにされるのは困る。
呪ったことすらないのに。
本当に呪ってやろうかと思うくらい、女子の陰口は陰湿だった。