【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
それを知ったのは、まだ桜が散る前、入学後まもなくの頃だった。
帰宅部のあたしも、一応どんな部活があるのかくらいは知っておこうと思って。
昼休み、購買で買ったカフェオレを飲みながら、部活案内の掲示板を一つ一つ見ていたときだった。
「ねぇサヤ、この“告白練習部”ってなんなの?」
あまりに突飛な部活名に、あたしは隣で焼きそばパンをほおばるサヤに聞かずにはいられなかった。
こんな部活があるなんて聞いたことがないし、この間の部活紹介でも“告白練習部”なんて部活の紹介はしていなかったし。
・・・・まぁ、ろくすっぽ聞いていなかったあたしがただ単に知らないだけかもしれないけど。
するとサヤは、焼きそばをチュルッと吸い上げてからこう言う。
「ああ、コクレンね」
“ああ、コクレンね”!?
ちょいとお待ちよ、何そのいかにもな感じの略し方。・・・・っていうか、サヤは知ってたの!?
「あれ、チカは知らない? けっこう有名なんだよ、部長が1人で張り切ってるとかで」
「知らないよ、そんなの」