【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
あたしは、ギャラリーたちに一歩、また一歩と詰め寄っていく先輩・・・・その制服の袖を引っぱった。
先輩がみんなに言いたかったことは分かったから。
あたしの心にも、ちゃんと届いているから。
だから、大丈夫・・・・。
「・・・・ちぃーちゃん?」
あたしが袖を引っぱったことで動きが止まった先輩は、一瞬ののち戸惑いながら振り向いた。
止められるなんて思ってもみなかったという顔で、心配そうに瞳を揺らしてあたしの顔を見ている。
その瞳を真っすぐ見つめて、あたしは口を開く。
「いいよ。もう」
と。
先輩の気持ちが嬉しいんだもん。
けれど先輩は眉を寄せる。
「よくないよ。ちぃーちゃんはここで中学の3年間を取り戻すんでしょ? 俺にも手伝わせてよ」
「だから、いいの」
「いいって・・・・なんで」
ちょっと考えれば分かること。
入学してまだ日が浅いあたしがコクレン部に入ったところで、たとえ先輩が宣伝したって、こんなに人が集まるわけがないんだ。
“有名人”でもないかぎりは。