【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
だから次の日、あたしの口からそのことを聞いたサヤはビックリってもんじゃないほど驚いていた。

『あたしのバカバカ!なんで塾行っちゃったの〜!』って、本気で後悔もしていた。

・・・・いやいや。ありがたいんだけどさ、サヤ。塾は行こうよ。


「でもさぁ、部長さん。部長さんってすごいよねぇ」


あたしの隣の席を借りて座っていたサヤが、頬杖をつきながらそう言った。

先輩と会うと、3回中1回は必ず持ち出すこの話。

それが始まる。


「ん〜、それは違うよ〜」

「違わないよ。あたしは、ただチカが傷つかないようにって、噂を耳に入れさせないようにすることしかできなかったけど」

「サヤちゃん・・・・」

「でも、部長さんはそんなチカを戦わせたんだよ? “この”チカを。あたしには考えもつかなかったし、できないもん・・・・」


ちょっと落ち込んだ顔をして、あたしを指差すサヤ。

サヤ・・・・。

“この”ってなんだ、このって。

でもサヤが落ち込むことじゃないよ。あたしのために頑張ってくれた、その気持ちが一番嬉しい。
 

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