【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
先輩がケンカ?

あのおちゃらけ男が?

見るからに弱そうなくせして、なんでケンカなんか。しかも3年の人となんか・・・・。


「どうしようってさぁ、サヤ!! そんなの今すぐ止めに行かなきゃダメじゃない!! あのおちゃらけ男が上級生相手に勝てるとは思えないもん!」

『こんなときまで・・・・。チカってやっぱ毒舌だわ』

「うるさいよっ。そんなのいいから早くどこでケンカしてるか教えて!飛んで行くから!!」


サヤが電話の向こうであんまり泣きそうな声を出すからだってば。

だからあたしは、ほんのちょっといつもの調子が戻っただけ。

本当はあたしだって寂しくて不安で今まで泣いていたんだから・・・・絶対言えないけど。


『みんな屋上のほうに走ってくから、たぶんそこだと思う』

「屋上ね!分かった、ありがとサヤ。じゃあ電話切るから!」

『あっ、チカ!』

「ん?」

『ファイト!』

「おうッ!!」


何に対しての“ファイト!”だかよく分からなかったけど、そうしてあたしはサヤに元気をもらって屋上を目指した。
 

< 51 / 73 >

この作品をシェア

pagetop