【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
「どいて!ちょっとどいてって、そこ通して!前に行かせて!」
「なんだよ、押すなって、オイ!無理やり入ってくんなって!」
「うるさい黙れ!」
屋上へ続く階段は、ケンカ見たさの野次馬が占拠していてなかなか上ることができなかった。
何度も何度も弾かれては突っ込んで、押し戻されてはふんばって。
そうして死に物狂いで野次馬をかき分け、あたしは進んだ。
「キャッ・・・・先輩っ!!」
やっとのことで野次馬の最前列に躍り出ると、ちょうど3年の人が先輩に殴りかかっていって。
もうすでにフラフラだった先輩は抵抗する間もなく後ろに吹き飛ばされた、という場面に遭遇した。
そしてそのまま、3年の人は倒れた先輩に馬乗りになる。
助けなきゃ・・・・!!
そう思う反面、人が殴り合うところを初めて見たあたしは、足がすくんで1歩が出なかった。
そうこうしているうちに、馬乗りになった3年の人は歯をむき出して先輩の顔面をもう一発。
鈍い音が響いた瞬間、野次馬の中にいた女子の1人が「高瀬君が死んじゃう!」と悲鳴を上げた。