【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
「歯ァ、食いしばりな」
あたしが1歩近づくたびに同じように1歩後ずさるその3年に、あたしは短く吐き捨てた。
ふんっ、逃げ腰の相手になんか負ける気がしないってんだ!
そうしてジリジリとフェンスまで追い詰めたところで、あたしはきつく拳を握り、狙いを定める。
そして・・・・。
「どりゃーーーーッ!!」
バチコーン!!
相手の左頬を、グーで思いっきり殴り飛ばした。
女子がグーで殴るなんて思ってもみなかったようで、フェンスに激突した3年は何が起きたのか分からないという顔。
「フンッ!あたしの先輩に手なんか出すからよ!おととい来やがれってんだいッ!!!!」
けれどあたしがそう仁王立ちで啖呵を切ってやると、一瞬ののち、ハッとして逃げていった。
一部始終を見ていた野次馬たちにも同じように啖呵を切ると、みんな一目散に逃げていって。
「ちぃーちゃんって、ケンカも強かったんだねぇ」
「先輩のためなら・・・・強くだってなれますよ」
屋上には、先輩とあたし。
2人だけが残された。