【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
「助けに来てくれてありがとね。自分がケンカ弱いのすっかり忘れてたよ。アハハ」


殴られたときに切れた口元を痛々しく持ち上げ、先輩が笑う。

まだ立てるまでに体力が戻っていないみたいで、上半身だけ起こしてあたしを見ている。


今すぐ保健室に連れて行かなきゃならないけど・・・・どうしてかな。

足に力が入ってくれない。

生まれて初めてケンカしちゃったからかな、先輩と久しぶりにまともに話しているからかな。

本当に足が、先輩のところに行きたいのに動かない。


「ちぃーちゃん?」


呼ばれてハッと我に返る。

少し前までは、先輩を守らなきゃと無我夢中だったからベラベラしゃべっていたけど。

今は、いろんなものが胸がつっかえて言葉が出てこなかった。


「ねぇ、ちぃーちゃん? ちぃーちゃんってば」

「なんでケンカなんかしたの?」


やっと言葉が出たのは、さらにもう2回、先輩に呼ばれてから。

さっきはわけも分からずケンカの仲裁に入ったけど、あたしにも聞く権利くらいあるんじゃないか。

そう思った。
 

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