【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
「うーん。・・・・それって、どうしても話さなきゃダメ?」


けれど、いつもは軽い先輩の口がこのときだけは重かった。

そう言って口の端から垂れた血を手の甲で拭っただけで、そのまま口を閉ざしてしまった。


「なに言ってんの、そんなのダメだよ。先輩のためにケンカまでしたあたしがバカみたいじゃん」

「・・・・だよねぇ」

「そうだよ」


サヤから連絡を受けたときから、このケンカには何か理由があるんじゃないかと思っていた。

いや、理由があってもケンカはしちゃいけないんだけど・・・・でも何か、先輩に我慢しきれないことがあったんじゃないかって。

そう思うんだ。

そしてその理由は、あたし絡みのことなんじゃないか・・・・って。

ただの自惚れかもしれないけど、そう感じるところがあった。


「ねぇ、先輩」


催促すると、先輩は小さく頷いてケンカの理由を話しはじめた。

「またちぃーちゃんを傷つけることになるかもしれないけど」と、そう前置きをして。

そっか、だから・・・・。

あたしの予想は当たった。
 

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