【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
“好きな子がいるから、吉岡千景を相手に告白の練習がしたい”
あたしたちのケンカの相手───あの3年生が、放課後になるとすぐ、そう言って先輩に依頼をしてきたらしい。
男子からの依頼は珍しいこともあって、先輩はあたしが喜ぶんじゃないかとその快くその依頼を引き受けたそうなのだ。
そして、一緒に部室へ向かった。
まぁ、そこまでは部としてもなんのことはない当然のこと。
あたしは正式な部員だし、男子の告白の練習はあたしじゃないと雰囲気だって出ないし。
それに最近のあたしが元気がなかったのは、あたしが部の役に立てていなくて落ち込んでいた、と先輩は思っていたらしいし。
でも、一緒に部室まで行く途中でその3年生があたしに対してひどいことを口にしたという。
それがケンカの原因。
「あの3年、めちゃくちゃひどいの!ちぃーちゃんの毒舌よりひどいね、ありゃ」
「なんて言ったの?」
「吉岡千景はあの噂通りの女なんだろ? 今は落ち着いてるみたいだけど、俺をフッたら噂復活だ。いくら“練習”でもフッたら同じことだ、って」