【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
上から下までしっかり観察したわりには、そのあまりのおちゃらけっぷりに言葉をなくしていると。

茶髪はもう一度。


「吉岡千景サンッ♪ ちょっとお話いいですかッ♪」


と言ってきた。

・・・・うげっ。

男子があたしを“吉岡千景”とフルネームで呼んでくるときは、決まってロクなことが起きない。

特に、おちゃらけた格好とポーズ以外は、カッコイイ部類に入るだろう人に声をかけられたときなんかは。


ほら、アンタも見てみなさいよ、周りの女子の目を!!

あたしもけっこう目立つほうだけど、加えて先輩もムダに目立つから、絶対あたしが変な噂を立てられるに決まっている。

女子とはそういう生き物なのだ。


「・・・・な、なんですか。あたし、もう帰るんで。時間がないので失礼します」


だからあたしは、急いで靴を履いて玄関を出た。



・・・・の、だけど。


「待って待って!時間は取らせないから話聞いてッ」

「グエッ!!」


慌てふためくその声とともに、制服の首根っこをがっつりつかまれてしまった。
 

< 6 / 73 >

この作品をシェア

pagetop