【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
「・・・・俺、ちぃーちゃんにずっと言えなかったことがあるんだ。今から言うから聞いてくれる?」
あたしの腕をつかんだまま、真剣な顔を崩さず先輩が言った。
4日ぶりに会った先輩をやっぱり好きだと思う気持ちや、まだあたしのことを“ちぃーちゃん”と呼んでくれる嬉しさや。
でも、退部することになるんだろうなという寂しさ、告白の返事かもしれないという緊張感や、あんな形で告白した後悔の思いや。
・・・・いろんな気持ちが重なりすぎて、そう言われてもあたしは相づちすらまともに打てなかった。
それに何より“ずっと言えなかったこと”って?
それが何か分からないから、聞きたいけど聞きたくない・・・・そんな複雑な気持ちになった。
「あのね、ちぃーちゃんをコクレン部に誘ったのには、ちょっとしたワケがあったんだ」
そんなあたしの心境を知ってか知らずか、先輩はプレハブ小屋を見つめてゆっくりと話しだした。
ゴクリ、と喉が鳴る。
“ワケ”・・・・。
何を言うんだろうと体中に緊張が走って、あたしは寒くもないのに鳥肌が立った。