【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
「ちぃーちゃんは全然覚えてないと思うけど。初めてちぃーちゃんとしゃべったのは、実は3月。合格発表の日だったんだ」
え?
確かにその日はサヤと見に行ったけど、そこで誰かと話したっけ?
しかもこんな、一度見たら忘れられないおちゃらけ男と・・・・。
「あ。その顔はやっぱり覚えてない顔だねぇ。まぁ、当然っちゃ当然かぁ。そのとき俺バスケ部にいたのね。んで、合格発表を見に来た子たちに勧誘してたの。・・・・先輩命令ってヤツで」
ああ、なんとなく、なんとなくだけど思い出してきた。
確か、合格発表の掲示板。
男子バスケ部の人たちが、来る人来る人・・・・それこそ男子でも女子でも誰彼かまわず勧誘していた。
その中に先輩も。
でもあたし、本当に先輩としゃべったりしたのかな。
そこら辺の記憶がない。
「俺はね、あんまり乗り気じゃなかったんだよ。考えてもみてよ、まだ中学の卒業式も済んでない子だちがだよ? いくら春から同じトコに通うからって、いきなり勧誘されたら引かない?」
確かに。
あたしは頷いた。