【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
それを見た先輩は、申し訳なさそうに頭をかいて続きを話しだす。
「ね。だから俺は一歩引いてたっていうか、仲間たちの後ろのほうで黙ってたの。仲間が声かけてく子たちみんなに、心ん中でゴメンねって言いながら」
そうだったのか・・・・。
「バスケ部入ってー」とか「君もバスケに興味あるっしょ?」なんてがっついていた人たちの中で、先輩はそんなことを思いながら。
でも、黙っていたならあたしと話すのは無理だったんじゃない?
話すのに何か決定的な出来事でもない限りは難しいはず。
「でね。仲間はとうとうちぃーちゃんたちにも勧誘を始めたの。ちぃーちゃんたち、そりゃもう怖がっちゃってさ。申し訳なかったなぁ、あれは・・・・」
あ!
やっと思い出した。
そうだ、その人たちに声をかけられて、でも怖くて声が出なくて。
それであたし・・・・サヤが今にも泣き出しそうな顔でオロオロするから、連れて逃げなきゃって。
そのときだよ。
「「・・・・ゴメンね」」
あたしが思い出すのを待っていたように、先輩が声を重ねた。