【短編】コクレン部。-あたしの恋の練習台-
 
確かにあのとき、サヤを引っぱるあたしの背中に声がかけられた。

そして、その「ゴメンね」に対してあたしは何か言ったんだ。

なんて言ったんだっけ。

思い出せ、思い出せ・・・・。


「「謝るくらいなら最初から声なんかかけないで。でも友だちもいるから助かった。ありがとう」」


また先輩が声を重ねる。

ハッとして顔を上げると、そこにはとびきり優しい顔をして微笑む先輩の姿があった。


「やっと思い出してくれたか〜。ちぃーちゃんって、実はけっこう忘れんぼサン?」

「・・・・なっ!」

「冗談。それが、ちぃーちゃんと初めてしゃべった言葉だった」


そう言ってからかったあと、先輩はテヘッと舌を出して笑った。

今まで忘れていたけど、あのとき確かに一人だけ謝ってくれた人がいたんだよね・・・・。

それが先輩だったなんて、なんかちょっと運命感じちゃう。


「それから4月になって、すぐにちぃーちゃんの噂を知って」

「うん」

「怖い思いをさせたお詫びがしたくて、バスケ部をやめて自分で部活を作ったんだ」
 

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