アリスズ
☆
「明日…旅立とう」
リサーと景子のいる前で、アディマがそう告げた。
二人の顔を見たので、二人に言っているのは分かる。
分かるのだが。
彼女は、そーっと隣を見た。
リサーは、大きな大きなため息をついている。
「本当に、荷馬車は使われないのですか?」
帰り道だというのに。
彼は、何とか説得したいと考えているようだ。
ああ、そっか。
神殿での儀式が終わったから、帰り道は徒歩でなくてもよいのだろう。
なのに、アディマは徒歩で帰ると言っているのか。
「どうせ19の間は、都には入れない…それなら、荷馬車を使っても同じだろう」
苦笑めいた表情で、アディマがリサーを諭す。
んーと、んーと。
昨日、少し話は聞きはしたが、精神的にうまく吸収できる状態ではなかった。
確か。
この国では、19というのは不吉な数字ということで。
夜の月が、19日で満月になるせいだと。
19は、黒く不吉な月の力が一番強い時期。
そう考えられているのだ、この世界は。
だから、彼は18のうちにこの神殿に到着しなければならなかったし、19になる前に出なければならなかった。
そして19を過ぎなければ、都に戻れない、ということになる。
昨日、ここの若奥様と話していた時も、その話題になった。
19になることを理由に、一年ほど放浪の旅に出る若者が多いらしい。
そして、彼女の兄はそのまま流浪の人になったという。
町から町をめぐる商売をしているとかで、数年に一度、ひょっこり顔を出すそうだ。
それを聞いた景子の頭に浮かんだのが──『フーテンの寅さん』だったのは、誰にも内緒なのだが。
勿論、テーマソングと一緒に脳内に流れた。
いつかどこかで会ったら、ということで、名前を聞いておく。
リクパッシェルイル。
リクさんかあ。
どんな人かと尋ねたら、彼女は少し沈んだ顔をしたのだ。
『神にそむくような姿をしているので…すぐに分かります』、と。
「明日…旅立とう」
リサーと景子のいる前で、アディマがそう告げた。
二人の顔を見たので、二人に言っているのは分かる。
分かるのだが。
彼女は、そーっと隣を見た。
リサーは、大きな大きなため息をついている。
「本当に、荷馬車は使われないのですか?」
帰り道だというのに。
彼は、何とか説得したいと考えているようだ。
ああ、そっか。
神殿での儀式が終わったから、帰り道は徒歩でなくてもよいのだろう。
なのに、アディマは徒歩で帰ると言っているのか。
「どうせ19の間は、都には入れない…それなら、荷馬車を使っても同じだろう」
苦笑めいた表情で、アディマがリサーを諭す。
んーと、んーと。
昨日、少し話は聞きはしたが、精神的にうまく吸収できる状態ではなかった。
確か。
この国では、19というのは不吉な数字ということで。
夜の月が、19日で満月になるせいだと。
19は、黒く不吉な月の力が一番強い時期。
そう考えられているのだ、この世界は。
だから、彼は18のうちにこの神殿に到着しなければならなかったし、19になる前に出なければならなかった。
そして19を過ぎなければ、都に戻れない、ということになる。
昨日、ここの若奥様と話していた時も、その話題になった。
19になることを理由に、一年ほど放浪の旅に出る若者が多いらしい。
そして、彼女の兄はそのまま流浪の人になったという。
町から町をめぐる商売をしているとかで、数年に一度、ひょっこり顔を出すそうだ。
それを聞いた景子の頭に浮かんだのが──『フーテンの寅さん』だったのは、誰にも内緒なのだが。
勿論、テーマソングと一緒に脳内に流れた。
いつかどこかで会ったら、ということで、名前を聞いておく。
リクパッシェルイル。
リクさんかあ。
どんな人かと尋ねたら、彼女は少し沈んだ顔をしたのだ。
『神にそむくような姿をしているので…すぐに分かります』、と。