アリスズ
☆
夜が、明ける。
景子は、中庭の木のところに来ていた。
遅くまで騒いでいた宴会のせいで、なかなか寝付けなかったのに、早く目が覚めてしまったのだ。
今日の旅は、少しつらいものになるかもしれない。
だが、気になることがあったのだ。
昨日接いだ、枝である。
景子は、木を見上げた。
枝が、美しく光っているのを、何度も何度も確認する。
それに、ようやくほっとしたのだ。
ああ、よかったと。
本当に大丈夫かどうかは、これから長い時をかけて見ていかなければ分からない。
接ぎ木には、いろんなアクシデントがあるのだ。
しかし、当座は大丈夫だろうと、景子はそれを確信したのである。
接ぐ前に、アディマがこめてくれた不思議な力もまた、味方をしてくれた気がした。
扉が開いた。
「おはよう…」
菊が、出てくる。
まだ、荷物を持ってきてはいない。
刀を一振り、腰に差しているだけだ。
「おはよう」
景子も答えながら、もう一度木を見上げる。
うまくいきそう──そんな思いを、言葉以外で菊に伝えようとしたのだ。
近づいて来た彼女も、同じように顔を上に向ける。
「…祈っていこうか」
数歩、菊は歩を下げた。
ああ。
彼女が何を言わんとしているのか分かって、景子もすすっと下がる。
菊が。
両手を開くように、一度持ち上げる。
景子は、それに目を奪われずにはいられなかった。
すぅっと動き、ぴたりと止まる。
そして。
靄を裂く──美しいかしわ手が、響き渡った。
夜が、明ける。
景子は、中庭の木のところに来ていた。
遅くまで騒いでいた宴会のせいで、なかなか寝付けなかったのに、早く目が覚めてしまったのだ。
今日の旅は、少しつらいものになるかもしれない。
だが、気になることがあったのだ。
昨日接いだ、枝である。
景子は、木を見上げた。
枝が、美しく光っているのを、何度も何度も確認する。
それに、ようやくほっとしたのだ。
ああ、よかったと。
本当に大丈夫かどうかは、これから長い時をかけて見ていかなければ分からない。
接ぎ木には、いろんなアクシデントがあるのだ。
しかし、当座は大丈夫だろうと、景子はそれを確信したのである。
接ぐ前に、アディマがこめてくれた不思議な力もまた、味方をしてくれた気がした。
扉が開いた。
「おはよう…」
菊が、出てくる。
まだ、荷物を持ってきてはいない。
刀を一振り、腰に差しているだけだ。
「おはよう」
景子も答えながら、もう一度木を見上げる。
うまくいきそう──そんな思いを、言葉以外で菊に伝えようとしたのだ。
近づいて来た彼女も、同じように顔を上に向ける。
「…祈っていこうか」
数歩、菊は歩を下げた。
ああ。
彼女が何を言わんとしているのか分かって、景子もすすっと下がる。
菊が。
両手を開くように、一度持ち上げる。
景子は、それに目を奪われずにはいられなかった。
すぅっと動き、ぴたりと止まる。
そして。
靄を裂く──美しいかしわ手が、響き渡った。