アリスズ
それぞれ
☆
セルディオウルブ卿は、一足先に荷馬車での帰路についた。
再会したリサーは、朝から不機嫌だった。
しかし、再び彼らの旅と、道をひとつにしたのだ。
その喜びを、景子は心の奥底からかみ締めていた。
ただ、最初の旅と違うことがいくつか。
シャンデルは怪我のため、手前の町の領主のところに預けられている、ということと──アディマの身長、だ。
正確には、身長だけではないのだが、とにかく景子は、まだそれには慣れていなかった。
それと、景子の言語能力。
前と違い、会話が分かるということは、とても旅に安心感が出る。
しかし、リサーと話をしていると、彼は時々顔を歪めるのだ。
どうやら、農村で覚えた言葉も多いため、ところどころ変な訛りがついたらしい。
「田舎者らしいな」
リサーに、容赦ない一撃を食らってしまう。
「リサードリエック、歩きながらケーコと話をしたいんだが…」
アディマは、旅路の途中でそう告げた。
リサーの視線が、一瞬後方の景子に飛ぶ。
しかし、主君の言葉は、許可を取っているという意味合いではなかった。
そうしようと思っているが、反対はしないよな?
そんな、念押しに聞こえたのである。
「勿論ですとも…我が君」
前半部は見事な棒読みで、リサーは道を開けた。
ああああ、視線が痛い。
景子の背中に突き刺さる、心配性のお供の視線を浴びつつ、景子はアディマの斜め後ろに立った。
さすがに、真横に並ぶのはまずいよなあ、という配慮のせいだ。
思えば、昔は何も知らない、言葉も分からないということで、相当アバウトだった気がする。
このアディマと、すぐ横で眠ったことさえあるのだ。
あれ?
景子は、自分の記憶に、首を傾げた。
何か、変だったのだ。
あ。
心当たりにぶちあたった時、彼女は一人奈落に落ちてゆくこととなる。
景子は──姿は子供だったとは言え、18歳の男に寄り添って眠っていたのだ。
セルディオウルブ卿は、一足先に荷馬車での帰路についた。
再会したリサーは、朝から不機嫌だった。
しかし、再び彼らの旅と、道をひとつにしたのだ。
その喜びを、景子は心の奥底からかみ締めていた。
ただ、最初の旅と違うことがいくつか。
シャンデルは怪我のため、手前の町の領主のところに預けられている、ということと──アディマの身長、だ。
正確には、身長だけではないのだが、とにかく景子は、まだそれには慣れていなかった。
それと、景子の言語能力。
前と違い、会話が分かるということは、とても旅に安心感が出る。
しかし、リサーと話をしていると、彼は時々顔を歪めるのだ。
どうやら、農村で覚えた言葉も多いため、ところどころ変な訛りがついたらしい。
「田舎者らしいな」
リサーに、容赦ない一撃を食らってしまう。
「リサードリエック、歩きながらケーコと話をしたいんだが…」
アディマは、旅路の途中でそう告げた。
リサーの視線が、一瞬後方の景子に飛ぶ。
しかし、主君の言葉は、許可を取っているという意味合いではなかった。
そうしようと思っているが、反対はしないよな?
そんな、念押しに聞こえたのである。
「勿論ですとも…我が君」
前半部は見事な棒読みで、リサーは道を開けた。
ああああ、視線が痛い。
景子の背中に突き刺さる、心配性のお供の視線を浴びつつ、景子はアディマの斜め後ろに立った。
さすがに、真横に並ぶのはまずいよなあ、という配慮のせいだ。
思えば、昔は何も知らない、言葉も分からないということで、相当アバウトだった気がする。
このアディマと、すぐ横で眠ったことさえあるのだ。
あれ?
景子は、自分の記憶に、首を傾げた。
何か、変だったのだ。
あ。
心当たりにぶちあたった時、彼女は一人奈落に落ちてゆくこととなる。
景子は──姿は子供だったとは言え、18歳の男に寄り添って眠っていたのだ。