アリスズ
☆
卿の屋敷に戻ったら、すぐさま二人は中へと通された。
アディマが、きちんと話を通しておいてくれたのだろう。
景子は、すーすーする首に、照れくさい気分を拭えずにいた。
菊は、鮮やかに少女の髪を編み上げた。
見事な腕だ。
飛び跳ねて喜びながら、少女は菊に『おにーちゃん、髪結い屋さんになれるわ』と興奮して言ったのだ。
おにーちゃんの部分をカットして通訳すると、菊は苦笑していた。
今のところ、髪結いになる気はないようだ。
そうこうしている間に、目的の部屋に到着したようだ。
扉の前に案内され、使用人がノッカーを鳴らす。
卿の声で許可が出され、目の前で扉が開いた。
「おお、太陽の娘よ…待ちわびたぞ」
まだ板についていない、こっちの世界の挨拶を見よう見まねでなんとかこなした後、さっそく本題に進む。
太陽の木の種を、埋める場所を決めるのだ。
アディマ達の姿が見えないのは、どこかの部屋で休んでいるからだろうか。
菊も、景子に同行はせずに、どこかへ消えて行った。
案内された裏庭は、広大な林。
太陽の木の種には、ここが良いのではないかと言われたのだ。
景子は、一人で林に入る。
先に、周囲の木々の状態や日当たりなどを、見ておきたいと思ったのだ。
あら。
何かの木材にされたのだろうか。
そこそこ大きい木の、切り株を見つける。
既に、切り株からは新芽が吹いていた。
しかし、景子が気になったのは、そこではない。
切り株の切断面だ。
そこには、あるはずのものがなかった。
年輪。
この木には、年輪がなかったのである。
あれ。
景子は、自分の思考が逆だったことに、はたと気づいた。
この国にきて、結構長い時間がたった。
3ヶ月くらいだろうか。
日本で3ヶ月といえば、ひとつ季節が変わる区切りだ。
しかし、暑いも寒いも大きな変動がない気がする。
もしかしてこの世界って──季節が、ない?
卿の屋敷に戻ったら、すぐさま二人は中へと通された。
アディマが、きちんと話を通しておいてくれたのだろう。
景子は、すーすーする首に、照れくさい気分を拭えずにいた。
菊は、鮮やかに少女の髪を編み上げた。
見事な腕だ。
飛び跳ねて喜びながら、少女は菊に『おにーちゃん、髪結い屋さんになれるわ』と興奮して言ったのだ。
おにーちゃんの部分をカットして通訳すると、菊は苦笑していた。
今のところ、髪結いになる気はないようだ。
そうこうしている間に、目的の部屋に到着したようだ。
扉の前に案内され、使用人がノッカーを鳴らす。
卿の声で許可が出され、目の前で扉が開いた。
「おお、太陽の娘よ…待ちわびたぞ」
まだ板についていない、こっちの世界の挨拶を見よう見まねでなんとかこなした後、さっそく本題に進む。
太陽の木の種を、埋める場所を決めるのだ。
アディマ達の姿が見えないのは、どこかの部屋で休んでいるからだろうか。
菊も、景子に同行はせずに、どこかへ消えて行った。
案内された裏庭は、広大な林。
太陽の木の種には、ここが良いのではないかと言われたのだ。
景子は、一人で林に入る。
先に、周囲の木々の状態や日当たりなどを、見ておきたいと思ったのだ。
あら。
何かの木材にされたのだろうか。
そこそこ大きい木の、切り株を見つける。
既に、切り株からは新芽が吹いていた。
しかし、景子が気になったのは、そこではない。
切り株の切断面だ。
そこには、あるはずのものがなかった。
年輪。
この木には、年輪がなかったのである。
あれ。
景子は、自分の思考が逆だったことに、はたと気づいた。
この国にきて、結構長い時間がたった。
3ヶ月くらいだろうか。
日本で3ヶ月といえば、ひとつ季節が変わる区切りだ。
しかし、暑いも寒いも大きな変動がない気がする。
もしかしてこの世界って──季節が、ない?