アリスズ
△
「大丈夫…抜かないよ」
菊は、まっすぐにアルテンを見た。
彼女の相方が、叩き出したであろう男を。
リサーが、刀に手を掛けない菊に、ほっと安堵した次の瞬間、アルテンは斬りかかってきた。
雑だが、一応剣術を習ったことのある動きだった。
だが、余りに遅い。
自分に振り下ろされる剣の、側面に手を当て――横の力を加えられるほど。
こちらの剣は、斬るというよりは、鋭い鈍器に近い。
鍛冶技術のせいか、戦い方のせいか。
遅いと言うことは、鈍器にとっては致命的だ。
ちゃんと当てなければ、相手はまた立ち上がるのだから。
「うわぁっ」
横からの衝撃に、アルテンの手は耐えられなかった。
剣を、落としてしまったのだ。
しかし、しびれただろう手をそのままに、彼は剣を拾おうとする。
へぇ。
少し、感心した。
さっさとあきらめる坊っちゃんだと、思っていたからだ。
剣を拾わせた。
また、横から落とす。
また、拾わせた。
今度は、なんと刃の部分を横にして振り下ろしてくる。
菊は、しぶとい相手を、内心で喜んでいた。
これなら、横から弾く手が危険だし、まともに当たっても痛みを与えられる。
菊は。
上から振り下ろされる剣の平を――両の手の平で、下から受け止めた。
相手は、ダイではない。
腰の入っていない、坊っちゃんの一撃だ。
しかし、力を流しながらも、それはずしんっと菊の全身に響いた。
恵まれてるな。
高い上背、贅肉より筋肉のつきやすそうな身体。
これで、遅さと精神的なものを何とかすれば、なかなかいいものになりそうだ。
菊は、まだ剣をあきらめていないアルテンを見た。
「景子さん…」
顔はそのままに、彼女は後方の景子を呼び掛けた。
「悪いんだけど…私、こいつにしばらく付き合っていいかな?」
梅のまいた種を、菊は実らせる気になってしまったのだ。
「大丈夫…抜かないよ」
菊は、まっすぐにアルテンを見た。
彼女の相方が、叩き出したであろう男を。
リサーが、刀に手を掛けない菊に、ほっと安堵した次の瞬間、アルテンは斬りかかってきた。
雑だが、一応剣術を習ったことのある動きだった。
だが、余りに遅い。
自分に振り下ろされる剣の、側面に手を当て――横の力を加えられるほど。
こちらの剣は、斬るというよりは、鋭い鈍器に近い。
鍛冶技術のせいか、戦い方のせいか。
遅いと言うことは、鈍器にとっては致命的だ。
ちゃんと当てなければ、相手はまた立ち上がるのだから。
「うわぁっ」
横からの衝撃に、アルテンの手は耐えられなかった。
剣を、落としてしまったのだ。
しかし、しびれただろう手をそのままに、彼は剣を拾おうとする。
へぇ。
少し、感心した。
さっさとあきらめる坊っちゃんだと、思っていたからだ。
剣を拾わせた。
また、横から落とす。
また、拾わせた。
今度は、なんと刃の部分を横にして振り下ろしてくる。
菊は、しぶとい相手を、内心で喜んでいた。
これなら、横から弾く手が危険だし、まともに当たっても痛みを与えられる。
菊は。
上から振り下ろされる剣の平を――両の手の平で、下から受け止めた。
相手は、ダイではない。
腰の入っていない、坊っちゃんの一撃だ。
しかし、力を流しながらも、それはずしんっと菊の全身に響いた。
恵まれてるな。
高い上背、贅肉より筋肉のつきやすそうな身体。
これで、遅さと精神的なものを何とかすれば、なかなかいいものになりそうだ。
菊は、まだ剣をあきらめていないアルテンを見た。
「景子さん…」
顔はそのままに、彼女は後方の景子を呼び掛けた。
「悪いんだけど…私、こいつにしばらく付き合っていいかな?」
梅のまいた種を、菊は実らせる気になってしまったのだ。