アリスズ
都へ
☆
アディマと再会した時、彼は一度景子の後ろを見た。
そして、彼女の顔を見た。
「おかえり…いろいろあったようだね」
ねぎらいの彼の声が、心にしみてゆく。
はぁ。
そこでやっと、景子は大きな息を洩らしたのだ。
これまで、菊がいないことに慣れようと一生懸命だった。
その肩の力が、抜け落ちたのである。
そうしたら、ようやく気付くことが出来た。
アディマの後ろに控えていたダイが、景子の後ろの空間を見ているのを。
そして、彼は一度目を閉じた。
次に開かれた時、ダイの目はもうアディマに向けられていて。
彼もまた、菊の不在を個人的に残念に思ったのだろうか。
「我が君…穀倉地帯の収穫を上げるかもしれない方法は、しかとこの目に焼き付けて参りました」
リサーの報告が始まったのを横に聞きながら、景子はこっそりダイの側面に回る。
アディマの、斜め後ろだ。
「菊さん…ダイさんによろしくって」
リサーの邪魔をしないように、小声で囁く。
そうしたら。
ダイは、少しだけ笑った。
苦みが混じっている笑み。
言葉ではないそれを、うまく翻訳は出来ないが、『何がよろしくだ』と、あきれているように感じた。
「よくやってくれたね、リサードリエック。それと…ケイコも」
ねぎらわれて、リサーは満足そうだった。
斜め後ろの景子は、突然自分の名前が出て驚いて、あたふたしてしまったが。
それに、いま。
あれ?
何か、違和感を感じた。
アディマの言葉の中に、何か違うものが入っていた気がするのだ。
ささいな、間違い探しのような。
一度、アディマを見て。
それから、考え込もうとして――すぐに気付いて、彼を二度見してしまった。
さ、さっき。
「どうかしたかい、ケイコ?」
彼女の視線に、不思議そうなアディマ。
ま、間違いない。
彼は、はっきりと『ケイコ』と発音していたのだ。
『ケーコ』ではなく――
アディマと再会した時、彼は一度景子の後ろを見た。
そして、彼女の顔を見た。
「おかえり…いろいろあったようだね」
ねぎらいの彼の声が、心にしみてゆく。
はぁ。
そこでやっと、景子は大きな息を洩らしたのだ。
これまで、菊がいないことに慣れようと一生懸命だった。
その肩の力が、抜け落ちたのである。
そうしたら、ようやく気付くことが出来た。
アディマの後ろに控えていたダイが、景子の後ろの空間を見ているのを。
そして、彼は一度目を閉じた。
次に開かれた時、ダイの目はもうアディマに向けられていて。
彼もまた、菊の不在を個人的に残念に思ったのだろうか。
「我が君…穀倉地帯の収穫を上げるかもしれない方法は、しかとこの目に焼き付けて参りました」
リサーの報告が始まったのを横に聞きながら、景子はこっそりダイの側面に回る。
アディマの、斜め後ろだ。
「菊さん…ダイさんによろしくって」
リサーの邪魔をしないように、小声で囁く。
そうしたら。
ダイは、少しだけ笑った。
苦みが混じっている笑み。
言葉ではないそれを、うまく翻訳は出来ないが、『何がよろしくだ』と、あきれているように感じた。
「よくやってくれたね、リサードリエック。それと…ケイコも」
ねぎらわれて、リサーは満足そうだった。
斜め後ろの景子は、突然自分の名前が出て驚いて、あたふたしてしまったが。
それに、いま。
あれ?
何か、違和感を感じた。
アディマの言葉の中に、何か違うものが入っていた気がするのだ。
ささいな、間違い探しのような。
一度、アディマを見て。
それから、考え込もうとして――すぐに気付いて、彼を二度見してしまった。
さ、さっき。
「どうかしたかい、ケイコ?」
彼女の視線に、不思議そうなアディマ。
ま、間違いない。
彼は、はっきりと『ケイコ』と発音していたのだ。
『ケーコ』ではなく――