アリスズ
☆
「だから、こんな旅をするんだ…」
おとぎ話と言うよりは、脚色された歴史だった。
イデアメリトスの血を持つと、不思議な力が使え、髪を伸ばせば成長が遅くなる。
アディマは、子供の頃から伸ばしたために、小さいままだった。
初代は、人の一生以上を生きてから髪を切ったために、その瞬間に死んだのだろうか。
「あなたも、イデアメリトスの御方の力を見たでしょ?」
何も知らない景子に呆れながら、シャンデルは言い放つ。
「お、大きくなった…こと?」
それくらいしか心当たりがなく、景子はおそるおそる聞いてみた。
「そうではなくて、あなたが愚かにも、獣に追い回されていた時よ! イデアメリトスの御方自らが、魔法であなたを救ってくださったじゃない!」
どうして、それを最初に思い出さないのかと、シャンデルは苛立っているようだった。
獣!?
景子は、あっと自分の口を押さえた。
あの時。
獣に山道で追い回された時。
何故か、獣は勝手に転げ落ちて行ったのだ。
「神殿に行くまで、たった一度しか使ってはならない魔法を、お使いになられてまで、あなたを救って下さったと言うのに!」
あ、あ、あ!
シャンデルの声が、景子の胃袋を掴み上げる。
すべて、つながったのだ。
あの時、リサーが何故あんなに怒っていたのか。
そして。
何故、二人に出ていけと行ったのか。
ただの一度、許された魔法を、景子ごときに使ってしまったのだから。
それは…怒るわ、出ていけと言われるわ。
景子は、リサーの気持ちが分かり過ぎて、ずしーんと頭が重くなった。
もっとひどいピンチになった時、魔法が使えずに旅が失敗したら――彼女をいくら恨んでも足りなかっただろう。
この恩は、それこそ一生かかっても返しきれない気がしてくる。
ああ。
突然に気づいた自分の負債の大きさに、景子はめまいがしたのだった。
「だから、こんな旅をするんだ…」
おとぎ話と言うよりは、脚色された歴史だった。
イデアメリトスの血を持つと、不思議な力が使え、髪を伸ばせば成長が遅くなる。
アディマは、子供の頃から伸ばしたために、小さいままだった。
初代は、人の一生以上を生きてから髪を切ったために、その瞬間に死んだのだろうか。
「あなたも、イデアメリトスの御方の力を見たでしょ?」
何も知らない景子に呆れながら、シャンデルは言い放つ。
「お、大きくなった…こと?」
それくらいしか心当たりがなく、景子はおそるおそる聞いてみた。
「そうではなくて、あなたが愚かにも、獣に追い回されていた時よ! イデアメリトスの御方自らが、魔法であなたを救ってくださったじゃない!」
どうして、それを最初に思い出さないのかと、シャンデルは苛立っているようだった。
獣!?
景子は、あっと自分の口を押さえた。
あの時。
獣に山道で追い回された時。
何故か、獣は勝手に転げ落ちて行ったのだ。
「神殿に行くまで、たった一度しか使ってはならない魔法を、お使いになられてまで、あなたを救って下さったと言うのに!」
あ、あ、あ!
シャンデルの声が、景子の胃袋を掴み上げる。
すべて、つながったのだ。
あの時、リサーが何故あんなに怒っていたのか。
そして。
何故、二人に出ていけと行ったのか。
ただの一度、許された魔法を、景子ごときに使ってしまったのだから。
それは…怒るわ、出ていけと言われるわ。
景子は、リサーの気持ちが分かり過ぎて、ずしーんと頭が重くなった。
もっとひどいピンチになった時、魔法が使えずに旅が失敗したら――彼女をいくら恨んでも足りなかっただろう。
この恩は、それこそ一生かかっても返しきれない気がしてくる。
ああ。
突然に気づいた自分の負債の大きさに、景子はめまいがしたのだった。