アリスズ
☆
先日、梅を交えて三人で話をした。
その時、ようやくアディマは、自分の言っていることが、どれほど難しいことか分かってくれたのだ。
嫌いって言ってしまえれば、楽なんだけどなあ。
景子は、屋敷の裏庭に腰かけて、ため息をつきながらしょんぼりしていた。
ああ、私、ホントにアディマが好きなんだ。
最近、ようやくそれが分かってきた──というか、目をそらしてはいられなくなってきたというか。
離れなくても悲しいし、離れても悲しいし。
女心は、複雑なのだ。
「ケイコ…」
不意に、後ろから声をかけられ、心臓が飛び出すほど驚いた。
慌てて、立ち上がって振り返ると、扉の向こうからアディマが現れたのだ。
「ケイコ…ちょっと座って話をしないか?」
こんな日当たりの悪い裏庭に、イデアメリトスと呼ばれている彼を座らせる!?
景子は、若干青ざめかけたが、相手はさっぱり気にせずに、彼女の隣に座った。
しょうがなく、彼女も再び腰を下ろす。
落ち着く──はずなどない。
跳ねる胸を押さえながら、景子はあらぬ方を向いていなければならないのだ。
「ウメに言われてから、いろいろ考えてみた…それで、ケイコに一つ、お願いがあってね」
穏やかな声に呼びかけられ、景子はそちらに糸がついたように顔を向ける。
そして、瞳を覗いてしまうのだ。
「ケイコ…僕と一緒に都に来て欲しい」
底の見えない、深い金の瞳。
景子の目に太陽を見たというが、アディマの目こそ、太陽そのものに思えるほど。
「ケイコの知恵を、この国は必要としている…僕を助けてくれないだろうか」
色恋の話を、彼はあえて胸の内側に沈めてから来た。
それが分かったら、寂しくも嬉しくなる。
たとえいつか、景子を思う気持ちが消えていったとしても、アディマは自分を必要としてくれるのだ。
へへへ。
しまりなく、彼女は笑った。
「嬉しいなあ…役に立てるなら」
嬉しいなあ、ホントに。
先日、梅を交えて三人で話をした。
その時、ようやくアディマは、自分の言っていることが、どれほど難しいことか分かってくれたのだ。
嫌いって言ってしまえれば、楽なんだけどなあ。
景子は、屋敷の裏庭に腰かけて、ため息をつきながらしょんぼりしていた。
ああ、私、ホントにアディマが好きなんだ。
最近、ようやくそれが分かってきた──というか、目をそらしてはいられなくなってきたというか。
離れなくても悲しいし、離れても悲しいし。
女心は、複雑なのだ。
「ケイコ…」
不意に、後ろから声をかけられ、心臓が飛び出すほど驚いた。
慌てて、立ち上がって振り返ると、扉の向こうからアディマが現れたのだ。
「ケイコ…ちょっと座って話をしないか?」
こんな日当たりの悪い裏庭に、イデアメリトスと呼ばれている彼を座らせる!?
景子は、若干青ざめかけたが、相手はさっぱり気にせずに、彼女の隣に座った。
しょうがなく、彼女も再び腰を下ろす。
落ち着く──はずなどない。
跳ねる胸を押さえながら、景子はあらぬ方を向いていなければならないのだ。
「ウメに言われてから、いろいろ考えてみた…それで、ケイコに一つ、お願いがあってね」
穏やかな声に呼びかけられ、景子はそちらに糸がついたように顔を向ける。
そして、瞳を覗いてしまうのだ。
「ケイコ…僕と一緒に都に来て欲しい」
底の見えない、深い金の瞳。
景子の目に太陽を見たというが、アディマの目こそ、太陽そのものに思えるほど。
「ケイコの知恵を、この国は必要としている…僕を助けてくれないだろうか」
色恋の話を、彼はあえて胸の内側に沈めてから来た。
それが分かったら、寂しくも嬉しくなる。
たとえいつか、景子を思う気持ちが消えていったとしても、アディマは自分を必要としてくれるのだ。
へへへ。
しまりなく、彼女は笑った。
「嬉しいなあ…役に立てるなら」
嬉しいなあ、ホントに。