アリスズ
△
「あら」
「へぇ…」
それが、久しぶりの双子の対面だった。
「汚くなったわね」
「老けたな」
お互いの久しぶりの印象を、容赦なく口にするものだから、一瞬お互いを睨みあった後──ニヤっと笑うハメとなる。
老けたというのは、失礼な表現だったかもしれない。
昔より、更に落ち着いた気がしたのだ。
まだ若いのに。
アルテンは、先に夫人との対面をしているはずだ。
菊は、控えの部屋とやらに押し込められていたが、そこに梅が現れたのである。
「アルテン坊ちゃんの、面倒を見てくれたんですってね」
長らく、気にとめていたのだろう。
梅が最初に出した話題は、それだった。
「いい男になったよ…蹴り出して正解だったな」
菊は、お世辞は言わないし、歯に衣も着せない。
だから、言った通りに梅は受け止めているはずだ。
「少年部の子供たちを見てたから、分かるわ…でも、最初よく言う事を聞いたわね」
ああ。
梅の言わんとしている事が分かって、菊はうっすらと微笑んだ。
「言う事、聞くわけないだろ? でも、奴は逃げなかったから…楽だったよ」
最初の頃。
毎日毎日、身体が動くようになったら、アルテンは打ち込んできた。
とにかく、菊が憎くてしょうがないようで、何とか地に伏せさせようと、ただそれだけを狙っていたのだ。
これが、逃げるタイプだったなら、菊はそのまま放置しただろう。
戦うのが嫌、痛いのはもう嫌、ではなく──アルテンは、逆にスッポンのようにしつこかった。
そのしつこさが、幸いしたと言っていいだろう。
少しずつ少しずつ、菊の戦い方を真似るようになった。
よく見るようになった。
そして。
ようやくにして、アルテンは彼女の強さを認めたのだ。
坊ちゃんの割に丈夫な身体を持っていて、本当によかった。
「あら」
「へぇ…」
それが、久しぶりの双子の対面だった。
「汚くなったわね」
「老けたな」
お互いの久しぶりの印象を、容赦なく口にするものだから、一瞬お互いを睨みあった後──ニヤっと笑うハメとなる。
老けたというのは、失礼な表現だったかもしれない。
昔より、更に落ち着いた気がしたのだ。
まだ若いのに。
アルテンは、先に夫人との対面をしているはずだ。
菊は、控えの部屋とやらに押し込められていたが、そこに梅が現れたのである。
「アルテン坊ちゃんの、面倒を見てくれたんですってね」
長らく、気にとめていたのだろう。
梅が最初に出した話題は、それだった。
「いい男になったよ…蹴り出して正解だったな」
菊は、お世辞は言わないし、歯に衣も着せない。
だから、言った通りに梅は受け止めているはずだ。
「少年部の子供たちを見てたから、分かるわ…でも、最初よく言う事を聞いたわね」
ああ。
梅の言わんとしている事が分かって、菊はうっすらと微笑んだ。
「言う事、聞くわけないだろ? でも、奴は逃げなかったから…楽だったよ」
最初の頃。
毎日毎日、身体が動くようになったら、アルテンは打ち込んできた。
とにかく、菊が憎くてしょうがないようで、何とか地に伏せさせようと、ただそれだけを狙っていたのだ。
これが、逃げるタイプだったなら、菊はそのまま放置しただろう。
戦うのが嫌、痛いのはもう嫌、ではなく──アルテンは、逆にスッポンのようにしつこかった。
そのしつこさが、幸いしたと言っていいだろう。
少しずつ少しずつ、菊の戦い方を真似るようになった。
よく見るようになった。
そして。
ようやくにして、アルテンは彼女の強さを認めたのだ。
坊ちゃんの割に丈夫な身体を持っていて、本当によかった。