アリスズ
□
「では、参りましょうか」
リサーは、朝日を背負いながら、アディマの前で膝をつく。
都の隣領から、ようやく出立できる日が来たのだ。
順調に行けば、明日の朝には都に入れるだろう。
そして、彼は明日──二十歳になるのである。
ケイコは、元気だろうか。
出発時と同じ4人で、都への道を歩みながら、アディマは彼女のことを思い出した。
わずか2日足らずで行ける距離ではあるのに、この半年というもの、ケイコはとても遠かったのだ。
手紙を書こうとしたのだが、リサーに言われた。
「彼女…字は読めましたっけ」
この一言で、轟沈だったのだ。
そう。
ケイコは、読み書きを覚えていなかった。
そんなおぼつかない状態で、彼女を都にやってしまったのである。
父親宛の手紙の中に、ケイコのことを書き記すことしか、アディマに出来ることはない。
しかし、イデアメリトスの長からの返事は、一切来なかった。
成人を済ませ、無事帰り着くまでは、完全に無視するつもりなのだろう。
ケイコは、しっかり者にはとても見えない。
だが、自分一人で立つ女性でもあった。
そして──イデアメリトスを、必要としていなかった。
現在は、リサーの父親を後ろ盾にして、都に留め置いているが、キクも彼女もどこででも生きていけそうなたくましさがある。
そのたくましさは、アディマを同時に不安にもするのだ。
いつ、彼の目の前からいなくなってしまっても、おかしくない、と。
半年。
本当に長かった。
彼の手元から離れてしまっている間に、どれほどケイコは変化しているだろうか。
おそらく、良い変化には違いない。
だが、変化すればするほど、このイデアメリトスの血を持つアディマであっても、手に負えなくなる気がした。
しかも。
都へ戻れば、祭りが始まってしまう。
アディマはしばらくの間、山ほどの行事で忙殺されることだろう。
都に向かって歩いているというのに──まったく、ケイコに近づく感じがしなかった。
「では、参りましょうか」
リサーは、朝日を背負いながら、アディマの前で膝をつく。
都の隣領から、ようやく出立できる日が来たのだ。
順調に行けば、明日の朝には都に入れるだろう。
そして、彼は明日──二十歳になるのである。
ケイコは、元気だろうか。
出発時と同じ4人で、都への道を歩みながら、アディマは彼女のことを思い出した。
わずか2日足らずで行ける距離ではあるのに、この半年というもの、ケイコはとても遠かったのだ。
手紙を書こうとしたのだが、リサーに言われた。
「彼女…字は読めましたっけ」
この一言で、轟沈だったのだ。
そう。
ケイコは、読み書きを覚えていなかった。
そんなおぼつかない状態で、彼女を都にやってしまったのである。
父親宛の手紙の中に、ケイコのことを書き記すことしか、アディマに出来ることはない。
しかし、イデアメリトスの長からの返事は、一切来なかった。
成人を済ませ、無事帰り着くまでは、完全に無視するつもりなのだろう。
ケイコは、しっかり者にはとても見えない。
だが、自分一人で立つ女性でもあった。
そして──イデアメリトスを、必要としていなかった。
現在は、リサーの父親を後ろ盾にして、都に留め置いているが、キクも彼女もどこででも生きていけそうなたくましさがある。
そのたくましさは、アディマを同時に不安にもするのだ。
いつ、彼の目の前からいなくなってしまっても、おかしくない、と。
半年。
本当に長かった。
彼の手元から離れてしまっている間に、どれほどケイコは変化しているだろうか。
おそらく、良い変化には違いない。
だが、変化すればするほど、このイデアメリトスの血を持つアディマであっても、手に負えなくなる気がした。
しかも。
都へ戻れば、祭りが始まってしまう。
アディマはしばらくの間、山ほどの行事で忙殺されることだろう。
都に向かって歩いているというのに──まったく、ケイコに近づく感じがしなかった。