アリスズ

 朝日が、昇り始める。

 そんな中、景子は隣領に入ろうとしていた。

 ネイディと共に。

 本当は、一人で行くはずだったのだが、心配した彼が一緒について来てくれたのだ。

 この領土は、都の外畑と関連がある。

 外畑の途中に領土の境界線があり、畑は続いているのに、管轄はこちら側の領主になるのだ。

 外畑の主力は、やはり穀類。

 暑さに強い穀物のようで、景子が中季地帯で見た穀物とは種類が違った。

 アディマは、まだ領主の屋敷かなあ。

 そして。

 ここは、景子がアディマと別れた町でもあるのだ。

 気になるものの、彼女は仕事中で──ネイディも一緒だった。

 行かなければならないのは、この町の農村部になるので、町の中心からは少し離れることになる。

 うーん。

 彼らのことを気にかけつつも、景子はスタスタと目的に向かって歩いていた。

 まもなく、町に入るための門が見えるだろう。

「ちょ、ちょっと待て…」

 後ろから、ぜいぜいと息をきらしながら、ネイディが恨みの声をあげた。

 ああ、忘れてた。

 景子は、ぴたりと足を止めて振り返る。

 彼は、下級貴族のぼっちゃんだった。

 しかも、生まれてこの方、外畑までしか出たことがないというのだ。

 1年近く、旅をしまくった景子より、体力がないようだ。

 とりあえず、剣を腰にぶら下げてはいるが、ボディガードとしても頼りない感じだった。

 都へのルートは、兵士がしっかり巡回しているので、非常に安全な道なのだが。

「大体、あんな固い地面で、よく眠れるな…旅慣れすぎだろ?」

 ネイディの目の下には、立派なクマが2匹。

 あはは。

 そのクマに睨まれている気がして、景子が苦笑していると。

 朝日の中に、より輝くものが目の端に入る。

 あれ?

 景子は、その光に視線を取られたのだった。
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