アリスズ

 久しぶり、久しぶり、久しぶりのアディマだー!!!

 本人を目の前にして、景子の尻尾は激しく打ち振られていた──尻尾があれば、の話だが。

 彼女を見つめてくれる金琥珀の目は、いつも通りの優しさを含んでいて。

 アディマの前に、いままさに自分がいるんだなあと、じわじわと自覚してゆく。

「ちょ…いい加減にしろよ…一体なんだってんだ」

 そしてまた、連れの存在をすっかり忘れていた。

「あはは、ごめんネイディ…あ、アディマ、同じ農林府のネイディさん」

「その呼び方で人に紹介するな、田舎者。ゴホン…農林府に勤めていますネイディランフルルです」

 咳払いをした後、ネイディはきりっと表情を整えて自己紹介する。

 視線は、リサーに向いている。

 多分、この中で一番髪が長いのが、彼だからだろう。

 分かりやすいなー。

 景子は、にこにこしながら、その光景を見ていた。

「ああ、農林府…」

 アディマの視線は、ネイディの二の腕のスカーフに向けられた。

 景子も、自分の腕のそれを彼にアピールした。

 ちゃんとお仕事やってますよ、という意味で。

 成果は、まあ──これから上げる予定だが。

 それに、アディマは軽く微笑みながら頷いてくれた。

「これから、都入りですか? いいところですよ、都は」

 にこやかにネイディは、歓迎の意を表した。

 あれ?

 違和感を、覚える表現だった。

 まるでアディマ達が、初めて都に入るかのような意味を含んでいたからだ。

 ええと。

 勘違い、してる?

 景子は、ネイディを見た。

 彼女の知り合いなので、同じように遠くから来たと思っているのだろうか。

 ダイが、微かに唇の端だけで笑った気がした。

「ありがとう、いいところだよ、都は」

 アディマは、そんなネイディを傷つけないようにか、柔らかい表現で返す。

 さすがは、アディマだ。

「ゴホンゴホン…彼女は、よく働いてますか?」

 しかし。

 そこに、リサーの余計な一言が追加され──景子は、足もとの地面が突然なくなった気がしたのだった。
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