アリスズ
☆
「あー…ケーコの勤務態度?」
ネイディは、ちらりと横目で彼女を見る。
どう言いつけてやろうかな──そんな気配が伺い知れる視線だった。
や、や、やめてぇぇ。
景子は青ざめながら、職場の仲間を見つめるしか出来ない。
確かに、彼女は学校にも行った。
畑ばかり走り回った。
提出した書類は少ない。
で、で、で、でも、遊んでたわけじゃないのよー。
今日だって、こうして隣領の畑を見ようと、出張してやってきたわけだし。
景子は、心の中で山ほどの言い訳を、並べたてようとした。
「リサードリエック、その辺にしておいてやれ…ケイコが倒れそうだ」
彼女の顔色を見て、アディマは苦笑しながら従者をなだめる。
「しかし、我が君…私の父のはからいで、農林府に置いているのです。私には知る権利があると思いますが」
なるほど、ごもっともな反論だった。
このままネイディによって、断罪されるだろう──そう覚悟しかけた時。
「我が君…って…え、父のはからいって…」
ネイディは、別の方向で混乱を始めていた。
目まぐるしく、四人の旅人のひとりひとりの顔を見ている。
「ケーコ、君の後見人って…ブエルタリアメリー卿だったよね…」
その声は、問いかけているものとはちょっと違った。
否定してくれ、誰か嘘だと言ってくれ、という絶望に似た音。
何故、そこまでネイディの声が落下していっているのか、とっさに彼女は分からなかった。
「ま、さ、か…イデアメリトスの…」
そして、ネイディの視線が、汗をだらだら流しながら、アディマで止まったのだ。
あ。
ようやく、景子は理解した。
「ああ…気にしなくていい。都に入るまでは、ただの旅人だよ」
いまにも平伏しそうな彼を、アディマは止める。
ネイディの目はアディマと景子を行ったり来たりしながら、『僕はどうしたらいいんだ?』と、彼女に必死に助けを求めていた。
「あー…ケーコの勤務態度?」
ネイディは、ちらりと横目で彼女を見る。
どう言いつけてやろうかな──そんな気配が伺い知れる視線だった。
や、や、やめてぇぇ。
景子は青ざめながら、職場の仲間を見つめるしか出来ない。
確かに、彼女は学校にも行った。
畑ばかり走り回った。
提出した書類は少ない。
で、で、で、でも、遊んでたわけじゃないのよー。
今日だって、こうして隣領の畑を見ようと、出張してやってきたわけだし。
景子は、心の中で山ほどの言い訳を、並べたてようとした。
「リサードリエック、その辺にしておいてやれ…ケイコが倒れそうだ」
彼女の顔色を見て、アディマは苦笑しながら従者をなだめる。
「しかし、我が君…私の父のはからいで、農林府に置いているのです。私には知る権利があると思いますが」
なるほど、ごもっともな反論だった。
このままネイディによって、断罪されるだろう──そう覚悟しかけた時。
「我が君…って…え、父のはからいって…」
ネイディは、別の方向で混乱を始めていた。
目まぐるしく、四人の旅人のひとりひとりの顔を見ている。
「ケーコ、君の後見人って…ブエルタリアメリー卿だったよね…」
その声は、問いかけているものとはちょっと違った。
否定してくれ、誰か嘘だと言ってくれ、という絶望に似た音。
何故、そこまでネイディの声が落下していっているのか、とっさに彼女は分からなかった。
「ま、さ、か…イデアメリトスの…」
そして、ネイディの視線が、汗をだらだら流しながら、アディマで止まったのだ。
あ。
ようやく、景子は理解した。
「ああ…気にしなくていい。都に入るまでは、ただの旅人だよ」
いまにも平伏しそうな彼を、アディマは止める。
ネイディの目はアディマと景子を行ったり来たりしながら、『僕はどうしたらいいんだ?』と、彼女に必死に助けを求めていた。