アリスズ
□
「我が君…」
ちくっと、隣からリサーから一言飛んでくる。
ああ。
アディマは、気づいた。
どうやら、我知らず笑みをおさえきれなかったようだ。
「はぁ…そろそろ諦めて下さっていると思ったのですが」
太陽に申し訳ないとでもいうかのように、彼は足もとに視線を落とす。
「ケイコは、元気そうだったな」
さらりと、リサーの言葉を受け流した。
同僚と一緒だったため、ゆっくり話せなかったのが残念だ。
「はぁ…」
元気であることさえ、リサーにとっては気鬱なようだ。
彼はケイコが邪魔だからといって、抹殺を企てるような人間ではない。
そこだけは、助かっている。
だから、どんなに耳の痛い話をされたとしても、リサーに彼女の話を振れるのだ。
遠くに、都と隣領の間を巡回する兵士らしき姿を見ながら、アディマは口うるさいが、今後一生頼りにする従者について考えていた。
旅立つ前、家柄と性格から選んだのが、リサードリエックだった。
ブエルタリアメリー家の長男で、アディマの小姓的な役割を担っていた一人だ。
どの貴族も、イデアメリトスの覚えをめでたいものにしたいと、子供のうちからお側付きとして差し出すのである。
リサーは、特に勉学に励んでいた。
そして、決して向いてはいないというのに、剣術も学んだ。
学術肌で、慎重な性格の男だった。
そして、何より。
アディマに自分の意見をぶつけてくるのは──彼だけだったのである。
腹の立つことも、不快な思いをしたこともあった。
しかし、最終的にリサーを選んだのだ。
それが、一番自分のためになると思った。
近づいてきた巡回の兵士が、足を止める。
彼は路肩によけ、こちらを探るように見ていた。
怪しい者ではないか、確認しているのだろう。
髪の長いリサーがいるから、問題なく通れるだろう。
そう、思っていた。
「我が君…」
ちくっと、隣からリサーから一言飛んでくる。
ああ。
アディマは、気づいた。
どうやら、我知らず笑みをおさえきれなかったようだ。
「はぁ…そろそろ諦めて下さっていると思ったのですが」
太陽に申し訳ないとでもいうかのように、彼は足もとに視線を落とす。
「ケイコは、元気そうだったな」
さらりと、リサーの言葉を受け流した。
同僚と一緒だったため、ゆっくり話せなかったのが残念だ。
「はぁ…」
元気であることさえ、リサーにとっては気鬱なようだ。
彼はケイコが邪魔だからといって、抹殺を企てるような人間ではない。
そこだけは、助かっている。
だから、どんなに耳の痛い話をされたとしても、リサーに彼女の話を振れるのだ。
遠くに、都と隣領の間を巡回する兵士らしき姿を見ながら、アディマは口うるさいが、今後一生頼りにする従者について考えていた。
旅立つ前、家柄と性格から選んだのが、リサードリエックだった。
ブエルタリアメリー家の長男で、アディマの小姓的な役割を担っていた一人だ。
どの貴族も、イデアメリトスの覚えをめでたいものにしたいと、子供のうちからお側付きとして差し出すのである。
リサーは、特に勉学に励んでいた。
そして、決して向いてはいないというのに、剣術も学んだ。
学術肌で、慎重な性格の男だった。
そして、何より。
アディマに自分の意見をぶつけてくるのは──彼だけだったのである。
腹の立つことも、不快な思いをしたこともあった。
しかし、最終的にリサーを選んだのだ。
それが、一番自分のためになると思った。
近づいてきた巡回の兵士が、足を止める。
彼は路肩によけ、こちらを探るように見ていた。
怪しい者ではないか、確認しているのだろう。
髪の長いリサーがいるから、問題なく通れるだろう。
そう、思っていた。