アリスズ
□
「うはははは。油断したか、馬鹿者が」
都の隣の町というのは、人や施設が遜色ないほど充実している。
馬で単騎駆けならば、半日もかからない距離なのだ。
おかげで。
小うるさい親戚も、この町に住んでいる、というワケだ。
「叔母上様…ひやかしにいらっしゃったのですか?」
褐色の肌に香油を塗り、輝きと香りを際立たせ、長い髪を美しくうねらせる、父の妹だ。
跡目こそ継げなかったが、彼女も正式にイデアメリトスとして名を連ねている──要するに、旅を成功させた者の一人である。
だからこそ、好きなだけ髪を伸ばし、若さを維持できるのだが。
「刺されたのが、おまえでなかったということは、よい従者のおかげというワケだな」
んふんふと、興奮気味に叔母は笑う。
女だてらに旅を成功させるほどの、肝の太さを持つ彼女だ。
この状況を、とてもとても楽しんでいるようにしか思えない。
「さて、その従者君はどこだね」
指をわきわきと動かしながら、叔母は目をらんらんと輝かせていた。
「今はまだ、治療中です」
入らないで下さいよ。
いい医師たちをつけてはいるが、斬りつけられた外傷とワケが違う。
最終的にはダイの運と生命力で、乗り切ってもらうことになる。
釘を刺す甥を、彼女は上から睨み下ろした。
背は、明らかにアディマの方が高いので、胸を反りかえらせてまで見下ろす視線にするのだ。
「馬鹿者! このイデアメリトスの日向花が、直々に助けてやろうと出向いてやったのだ。ひれ伏して感謝してもよかろう」
(実年齢が)若い時に呼ばれていた二つ名を振りかざし、叔母は更に胸を反らす。
あ。
そこで、ようやくアディマは気づいた。
親族とは言え、彼は叔母の魔法能力を詳しくは知らない。
助けるというからには、その魔法が使える、ということか。
希望が、そこにあるというのだ。
「いくらでも…ひれ伏しましょう」
アディマが、瞼を伏せかけた時。
「気持ち悪いわ。兄者の半分くらいはふてぶてしくしておれ」
一体──どうしろと。
「うはははは。油断したか、馬鹿者が」
都の隣の町というのは、人や施設が遜色ないほど充実している。
馬で単騎駆けならば、半日もかからない距離なのだ。
おかげで。
小うるさい親戚も、この町に住んでいる、というワケだ。
「叔母上様…ひやかしにいらっしゃったのですか?」
褐色の肌に香油を塗り、輝きと香りを際立たせ、長い髪を美しくうねらせる、父の妹だ。
跡目こそ継げなかったが、彼女も正式にイデアメリトスとして名を連ねている──要するに、旅を成功させた者の一人である。
だからこそ、好きなだけ髪を伸ばし、若さを維持できるのだが。
「刺されたのが、おまえでなかったということは、よい従者のおかげというワケだな」
んふんふと、興奮気味に叔母は笑う。
女だてらに旅を成功させるほどの、肝の太さを持つ彼女だ。
この状況を、とてもとても楽しんでいるようにしか思えない。
「さて、その従者君はどこだね」
指をわきわきと動かしながら、叔母は目をらんらんと輝かせていた。
「今はまだ、治療中です」
入らないで下さいよ。
いい医師たちをつけてはいるが、斬りつけられた外傷とワケが違う。
最終的にはダイの運と生命力で、乗り切ってもらうことになる。
釘を刺す甥を、彼女は上から睨み下ろした。
背は、明らかにアディマの方が高いので、胸を反りかえらせてまで見下ろす視線にするのだ。
「馬鹿者! このイデアメリトスの日向花が、直々に助けてやろうと出向いてやったのだ。ひれ伏して感謝してもよかろう」
(実年齢が)若い時に呼ばれていた二つ名を振りかざし、叔母は更に胸を反らす。
あ。
そこで、ようやくアディマは気づいた。
親族とは言え、彼は叔母の魔法能力を詳しくは知らない。
助けるというからには、その魔法が使える、ということか。
希望が、そこにあるというのだ。
「いくらでも…ひれ伏しましょう」
アディマが、瞼を伏せかけた時。
「気持ち悪いわ。兄者の半分くらいはふてぶてしくしておれ」
一体──どうしろと。